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スピードガードは、一般に土留が不要とされている1.5メートル未満の浅い掘削溝工事で作業する方を土砂崩壊による生き埋め事故から守るために開発された製品です。作業者の周りをしっかりと保護し、作業に合わせて溝内を一緒に移動できるのが特徴です。
掘削深さ1.5メートル未満では、土止め支保工の設置が計画されていないことが多く、掘削直後は溝の壁が安定しているように見えても、時間が経つと崩れることがあります。地盤は鉄やコンクリートなどの人工的な材料とは異なり、強度に不確実性が高いため、安定しているようでも見た目以上に注意が必要です。
スピードガードは、溝の壁を支える「土止め」ではなく、崩れた土砂から作業者を守る「土砂遮断」を目的とした軽量で持ち運びやすい機材です。これにより、作業現場での安全性を高めることができます。
標準タイプ | 小型タイプ | |
適用溝深さ | 1.5m未満 | 1.5m未満 |
適用溝幅 | 0.8m~1.1m | 0.6m~0.8m |
機材延長 | 1.4m | |
機材高さ | 1.4m | 1.2m |
質量 | 18kg | 16.5kg |
Xフレーム | アルミ合金 | |
受圧シート(防炎) | ポリプロピレン | ポリエステル |
スピードガードの主な構成は2つの「Xフレーム」とそれらを繋ぐ「梁」、そして「受圧シート」とシンプルです。
Xフレームは自由に回転するように交差部分で結合されており、側面には高強度な受圧シートが帆のように張られています。このシートが崩壊した土砂を受け止め、スピードガードの内部に生存空間を確保します。
Xフレームと受圧シートに囲まれた中で作業していれば作業者の被災リスクを大幅に低減することが可能です。
Q1. どのような工事で使うのでしょうか?
A1. 深さ1.5m未満の溝工事でご使用ください。
掘削した溝が一見自立しているようで、崩壊のおそれが無いように見えても「もしも」の場合に備えましょう。なお、崩壊の恐れがある場合は必ず「土止め支保工」を使用してください。
Q2. 矢板や切梁がなくても大丈夫ですか?
A2. はい、大丈夫です。
側面の高強度な受圧シートが崩壊した土砂をしっかりと受け止めます。受圧することで少し内側に膨らみますが生存空間は残るように設計されています。また、崩土がシートに衝突すると、その反作用でXフレームが開き、梁が強く外側に張り出す構造になっています。
Q3. 簡単に使えるのでしょうか?
A3. はい、簡単にお使いいただけます。
溝の中に下ろすだけで、Xフレームが重力で半自動的に開くため、溝内での組立が不要でスピーディに設置できます。これは設置以前に溝内に作業者が立ち入ることのない「土止め先行工法」の考えに基づいています。
土止め支保工のように定められた土圧に抵抗するものと異なり、土砂遮断性能は崩壊土砂に抵抗するメカニズムと構造的な必要強度の検証が不可欠です。
当社では独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所(安衛研)と共同でその効果を研究し数々の実証実験を行っています。
実際の大きさの模型地盤を崩壊させてスピードガードに衝突させる実験です。スピードガードが崩壊土砂を遮断して内部に生存空間を確保しています。また、土砂を受け止めた際に受圧シートに生じた張力はXフレームが開くように働き、溝壁を押し返して補強する効果も確認されました。
このような実験を通じて、Xフレームに生じた曲げモーメントや受圧シートの張力を計測して、構造と強度を最適化しています。
遠心模型実験装置と模型地盤の様子です。遠心模型実験は1/nサイズの地盤模型にn倍の重力を作用させることで実物と同じ応力状態を再現できる手法です。
深さ1.5mを基準とし、異なる深さと幅の溝モデルで崩壊を再現し、地盤内部の変形や溝深さの違いによる土砂遮断の性能を確認しました
1)特許第6431239号「土砂遮断装置」,2018年10月5日.
2)Satoshi Tamate, Tomohito Hori and Ryoichi Kikuta(2022) Design of personal soil guard system for safer trench excavations in shallow depths. Proceedings of the 20th International Conference on Soil Mechanics and Geotechnical Engineering, ISBN 978-0-9946261-4-1, pp. 2267 - 2272.
3)玉手 聡,堀 智仁,菊田亮一(2024) 小規模な溝崩壊による労働災害防止のための技術的保護方策に関する実証的研究,労働安全衛生研究,Vol. 17 , No. 1 , pp. 3‒18.(リンク)